ソフトバンク、年内10億AIエージェント創出へ始動

概要

ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は、2025年7月16日に開催された「SoftBank World 2025」において、年内に10億個のAIエージェントをグループ全体で創出する目標を宣言しました。これは、AIが自律的に思考し行動する「デジタル労働力」として社会構造を根本から変革するという同氏のビジョンに基づいています。具体的には、AI演算能力を従来のムーアの法則をはるかに超える速度で向上させ、従業員一人ひとりが多数のAIエージェントを「部下」のように活用する「千手観音プロジェクト」を推進することで、生産性の大幅な向上を目指しています。

背景

AI技術の進化は目覚ましく、孫氏はAIが音楽制作やプログラミング、交渉といった多岐にわたる業務を自律的に実行するだけでなく、将来的には感情や意識を持つレベルに達すると予測しています。この急速な進化を捉え、ソフトバンクはOpenAIとの共同プロジェクトである総額75兆円規模の「スターゲート計画」を推進しており、AIインフラの構築と演算能力の飛躍的向上を図っています。同計画では、チップ数、チップ性能、モデル性能のそれぞれ10倍向上を掛け合わせ、1サイクルで1000倍、3サイクルで10億倍の性能向上を目指すとしています。

課題

AIエージェントの普及と運用には複数の課題が存在します。まず、「スターゲート計画」のような大規模なAIインフラ投資は、約75兆円という巨額な規模であり、ソフトバンクグループにとって大きなリスクを伴います。また、これほどのAIインフラを支えるには膨大な電力が必要となり、日本国内の電力供給体制がその需要に対応できるかという電力問題が指摘されています。加えて、孫氏は日本企業のAI活用率が中国の80%に対してわずか20%に留まっている現状に警鐘を鳴らしており、国内におけるAI導入の遅れも大きな課題として認識されています。

今後の展開予想

ソフトバンクは、AIエージェントが自らAIを生成する「自己増殖」機能や、エージェント同士が連携する「エージェントOS」の開発を進めることで、その活用範囲を飛躍的に拡大させることを目指しています。これにより、企業内での戦略立案、プログラミング、顧客対応など、多岐にわたる業務がAIエージェントによって自動化され、人間はより創造的で感情的なコミュニケーションに集中できるようになると予想されます。2025年7月24日現在、既に旅行会社向けAIコールセンターやAIショッピングアシスタントなどの具体的な業務での活用事例が示されており、今後は社会全体の生産性向上に大きく寄与することが期待されています。

2. ソフトバンク、AIエージェント連携の「Agent Firewall」開発

概要

ソフトバンク株式会社は、2025年7月24日、複数のAIエージェントが企業や組織の枠を超えて安全に連携するための新技術「Agent Firewall(仮称)」のプロトタイプ開発に成功したと発表しました。この技術は、異なるデータ取り扱いルールや管理基準を持つAIエージェント間において、データ主権を維持しつつ柔軟なデータ共有を可能にするものです。同社は2026年度の実用化を目指しており、AIエージェントの普及に伴うセキュリティ課題への重要な解決策となることが期待されています。

背景

近年、AIエージェントが自律的にタスクを実行し、相互に連携することで社会全体の最適化を目指す「マルチAIエージェント」の動きが加速しています。AIエージェント間の通信プロトコルやインターフェースの標準化は進展しているものの、企業や組織をまたぐデータ連携においては、各々が持つデータ主権や異なるセキュリティポリシー、アクセス権限管理の基準差といった課題が顕在化していました。これらの障壁が、AIエージェントの真価を発揮する上での課題として認識されていました。

課題

従来のネットワーク境界型のセキュリティ対策では、複雑化するマルチAIエージェント環境におけるデータ連携の安全性を確保することが困難でした。特に、企業ごとに異なる法規制や内部ルールに基づいたデータ管理が求められる中で、AIエージェントが機密情報を安全にやり取りする仕組みの構築が急務となっていました。不正なデータアクセスや情報漏洩のリスクを最小限に抑えつつ、AIエージェントの自律的な活動を最大限に引き出すための技術的な解決策が求められていたのです。

今後の展開予想

ソフトバンクが開発した「Agent Firewall」は、ゼロトラストの考え方に基づき、全ての通信を常に確認し、必要な範囲だけをチェックする仕組みを採用しています。これにより、安全性を保ちながらシステムの負荷を軽減し、大規模かつ分散型のネットワーク環境にも柔軟に対応可能となります。今後は、2026年度の実用化に向けて開発が本格化され、将来的には「ソブリンクラウド」や「ソブリンAI」と連携することで、企業や自治体、研究機関が扱う機密性の高いデータを保護しつつ、次世代社会インフラの実現に貢献すると見込まれています。
※ この分野の最新動向については、引き続き注目が集まっています。